『月刊ゴルフマネジメント』2024年9月号に代表理事である木下裕介の連載の第3回が掲載されました

2024年9月1日発行の『月刊ゴルフマネジメント』2024年9月号に代表理事である木下裕介の「ゴルフ場のデジタル革新」の連載の第3回が掲載されました。

今回は「ドローンを活用したコース管理のDXについて」というタイトルで、先日の日本芝草学会で「ドローンによるゴルフ場グリーン芝草のセンシング」ついて発表された株式会社アクションコーポレーションの宇城氏をインタビューし、そちらをまとめた内容になっておりますので、ご一読いただけますと幸いです。

目次

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近年、ゴルフ場業界では人材不足やコース管理の効率化が喫緊の課題となっています。特に、気候変動による芝生の管理難度の上昇や、熟練した管理者の高齢化などが深刻な問題として浮上しています。

その解決策として、自動芝刈り機の導入など最新技術を活用したコース管理のDX化が注目を集めています。

今回は、先日の日本芝草学会で「ドローンによるゴルフ場グリーン芝草のセンシング」ついて発表された株式会社アクションコーポレーションの宇城氏に、ドローンを活用したゴルフコース管理のDX化についてお話を伺いました。


まず、宇城さんのバックグラウンドについて教えてください。

宇城氏: 元々は水産学の分野で動物プランクトンの研究をしていました。具体的には、魚の稚魚の餌となる動物プランクトンの培養水微生物に関する研究です。その後、様々な経緯があって健康食品会社の研究開発部門で働くことになりました。

50歳を過ぎてから現在の会社に入り、芝生や土壌の栄養分析など、ゴルフ場の管理に関する研究を始めました。一見すると全く異なる分野に思えるかもしれませんが、微生物の世界を研究してきた経験が、芝生の管理にも活かされているように思います。

ゴルフ場管理のDX化について、どのような取り組みをされていますか?

宇城氏: 主にドローンを活用した芝草のセンシングと液体肥料などの散布に力を入れています。ドローンで撮影した画像情報からNDVI(正規化植生指数)などが算出され、芝生の健康状態として可視化されます。これにより、従来の目視による確認では難しかった微妙な変化も捉えることができます。

また、液体肥料の散布にもドローンを使用しています。我々が開発した液体肥料は、従来の粒状肥料と比べて少量で効果的かつ均一に散布できるという特徴があります。ドローンを使用することで、ピンポイントでの散布が可能になり(可変施肥)、肥料の無駄を減らすとともに、環境への負荷も軽減できます。

ドローンを活用することで、どのようなメリットがありますか?

宇城氏: まず、労力の削減が大きいですね。1回のフライトで18ホール全体のセンシングができます。従来であれば、キーパーが一つ一つのホールを回って確認する必要がありましたが、ドローンを使えば短時間で全体の状況を把握できます。

また、デジタルデータとして記録されるので、経時的な変化の把握や、ピンポイントでの対応が可能になります。例えば、NDVIが0.5以下の部分だけにドローンで散布するといったことができます。これにより、必要な箇所に必要な量だけ肥料や農薬を散布できるので、コストの削減にもつながります。

さらに、データの蓄積により、季節ごとの変化や年々の傾向なども把握しやすくなります。これは、長期的なコース管理戦略を立てる上で非常に有用です。

日本のゴルフ場管理の現状について、どのようにお考えですか?

宇城氏: 正直なところ、アメリカなどと比べるとかなり遅れていると感じます。アメリカでは大学に芝草学の専門課程があり、高度な知識を持った人材が管理を行っています。彼らは科学的なアプローチでコース管理を行い、新しい技術も積極的に取り入れています。

一方、日本では経験則に頼る部分が大きく、新しい技術の導入にも消極的な傾向があります。多くのゴルフ場では、長年の経験を持つキーパーが感覚的に管理を行っているのが現状です。もちろん、彼らの経験は貴重なものですし、日本人芝草管理者の感性の方が欧米人のそれより優れていると思いますが、気候変動などの新しい課題に対応するには、科学的なアプローチも必要だと考えています。

今後、ゴルフ場管理のDX化を進めていく上での課題は何だとお考えですか?

宇城氏: 人材育成が最大の課題だと考えています。技術はあっても、それを使いこなせる人材が不足しています。ドローンやAIといった新しい技術を理解し、それをゴルフ場管理に活かせる人材を育てていく必要があります。

また、現場の方々の意識改革も必要です。データに基づいた管理の重要性を理解してもらい、新しい技術を積極的に取り入れる姿勢が求められます。ただ、これは簡単なことではありません。長年の経験に基づいて仕事をしてきた方々に、新しい方法を受け入れてもらうには時間がかかるでしょう。

さらに、初期投資の問題もあります。ドローンやセンシング機器の導入には一定のコストがかかります。その投資に見合う効果があることを、経営者の方々に理解してもらう必要があります。

最後に、今後の展望についてお聞かせください。

宇城氏: まずは、ドローンやAI、それにバイオスティミュラント(BS)を活用したコース管理の普及を目指しています。これにより、労力の削減と管理の精度向上を同時に達成できると考えています。

また、単なる効率化だけでなく、ゴルフ場全体の生態系にも配慮した管理方法の研究も進めたいと考えています。例えば、土壌中の微生物の活力や多様性を高めることで土壌を健全にし、より健康で強靭な芝草を育てることができます。これには、BS(弊社ではバイオ栄養素)や有機資材の活用が有効です。結果として、農薬や肥料の使用量を減らすことにもつながります。

将来的には、ゴルフ場がより環境に優しく、持続可能な形で運営されることを目指しています。ゴルフ場は広大な緑地を有しており、適切に管理すれば、地域の生態系保全にも貢献できるはずです。科学技術の力を借りて、プレイヤーにとって魅力的なコースであると同時に、環境にも優しいゼロ・カーボンゴルフ場を実現したいと考えています。


ゴルフコース管理のDX化は、人材不足や環境問題といった課題に対する有効な解決策となる可能性を秘めています。しかし、技術の導入だけでなく、人材育成や意識改革など、多角的なアプローチが必要であることが、宇城氏のお話から伺えました。

今後、ゴルフ業界全体でDX化の動きが加速することが期待されます。それにより、より効率的で持続可能なゴルフ場運営が実現し、プレイヤーにとってもより魅力的なコースが増えていくことでしょう。宇城氏のような先駆者の取り組みが、日本のゴルフ業界に新たな風を吹き込んでいくことを期待せずにはいられません。

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