『月刊ゴルフマネジメント』2025年6月号に私が担当する連載「ゴルフ場のデジタル革新」の第12回を掲載いただきました。
今回は「ゴルフ場の業務負荷を軽減するメンバーシップ管理のDX」というタイトルで、メンバーアプリの運用を開始した弊社ゴルフ場であるセブンハンドレッドクラブの事例を通して、競技運営や情報提供を含めたゴルフ場のメンバーシップ管理にもたらす変革の可能性についてまとめておりますので、ご一読いただけますと幸いです。

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日本のゴルフ場の多くはメンバーシップ制を採用しており、メンバーの皆様との長期的な信頼関係と質の高いゴルフライフの提供が、その経営の根幹をなしています。しかし、社会全体のデジタル化が進む現代において、ゴルフ場のメンバー層においてもITリテラシーの高い世代が少しずつ増加しており、従来の紙や電話を中心としたアナログな会員管理方法では、利便性の低下や運用コストの増大といった課題が顕在化しています。このような背景から、ゴルフ場における会員管理のDXは、もはや単なる効率化の手段ではなく、今後のゴルフ場経営を持続可能にするための喫緊の課題と言えるでしょう。
私たちが運営する栃木県のセブンハンドレッドクラブでは、このような時代の変化に対応し、メンバーの皆様により快適でスマートなゴルフライフを提供するため、先月からメンバーアプリの本格運用を開始いたしました。この多機能なアプリを中心に、予約、競技運営、情報提供といった様々な側面においてDXを積極的に推進しており、その具体的な取り組みの一部を、以下にご紹介させていただきます。
プレー予約のDX:時間と場所を選ばない利便性
これまで、ゴルフの予約は、メンバーの皆様にとって電話をかける時間的な制約や、ゴルフ場が開いている時間帯に連絡しなければならない煩わしさ、あるいは来場時にフロントで直接申し込む必要がありました。しかし、メンバーアプリの導入により、これらの予約チャネルをオンラインプラットフォームへと全面的に移行しました。これにより、メンバーの皆様は24時間365日、ご自身の都合の良い時間に、場所を選ばずに予約が可能となりました。
また、同伴者の登録においては、従来、同伴者の情報を予約代表者に電話で確認する必要がありましたが、新しいシステムでは、予約代表者にSMS(ショートメッセージサービス)を通じて同伴者登録を促すメッセージと入力ページが自動送信されます。これにより、予約の手間が省けるだけでなく、ゴルフ場側の情報入力ミスも防ぐことができ、双方にとって大きなメリットとなっています。
競技運営のDX:スムーズな参加と迅速な情報伝達
ゴルフ場における競技運営においても、DXによる変革が進んでいます。これまで紙や電話で行っていた競技のエントリーを、Web上のフォームに置き換えました。これにより、メンバーは自宅や移動中など、どこからでも手軽にエントリーが可能となり、ゴルフ場側も集計作業の効率化を図ることができます。
また、競技のスタート時間の通知方法も、他のゴルフ場などで採用されている郵送ではなく、SMSを採用しました。SMSは郵送やメールに比べて迅速かつ確実に情報を届けることができ、メンバーはスタート時間をすぐに確認することができます。ハガキの印刷や郵送にかかっていたコストも削減でき、環境負荷の低減にも繋がります。
情報提供のDX:リアルタイムな情報アクセス
これまでゴルフ場からメンバーの皆様へ郵送でお送りしていた様々な情報、例えば会報誌やイベント告知、クラブからのお知らせなども、メンバーアプリを通じてWeb上で閲覧できるようにいたしました。これにより、メンバーは最新の情報をリアルタイムで確認することができ、情報の遅延や紛失のリスクを軽減できます。
また、ゴルフ場側も印刷や郵送にかかる時間とコストを削減できるだけでなく、動画や詳細な画像など、紙媒体では伝えきれなかった豊富な情報を提供することが可能になります。プッシュ通知機能を活用すれば、重要な情報をタイムリーにメンバーに届けることもできます。
DX推進による効果と今後の展望
メンバーシップ管理のDXは、まだ始まったばかりですが、既に予約手続きの簡略化、競技エントリーのオンライン化、情報伝達の迅速化といった具体的な効果が現れています。メンバーの皆様からは、「予約が以前よりもずっと簡単になった」「最新の情報がすぐに手に入るので、とても便利になった」といった、非常に前向きなフィードバックを多数いただいております。
もちろん、DXの推進には、システムの導入や運用に関するコスト、そして何よりも、ITリテラシーが高くないメンバーの方々への丁寧なサポート体制の構築といった、乗り越えるべき課題も存在します。また、システムの安定運用やセキュリティ対策の強化は、メンバーの皆様に安心してサービスをご利用いただくための重要な責務であり、継続的に取り組んでいく必要があります。
今後は、アプリを通じて年会費請求を行ったり、メンバー向けの優待券配布を行ったりするなど機能拡充していき、業務効率化やコスト削減をしながら、メンバーライフをより良くしていくことを積極的に検討しています。
日本のゴルフ業界は、長らく伝統的な運営方法が主流でしたが、これからの時代においては、テクノロジーを積極的に活用し、顧客体験価値の向上と効率的な運営体制の構築を両立させていくことが不可欠です。今後の時代の変化を見据え、常に新しい技術を取り入れながら、クラブの未来を支えるメンバーの皆様にとって快適でより良いゴルフライフを提供することが求められているのではないでしょうか。
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