ゴルフライフデザイン代表理事の木下です。
日本のゴルフ場の多く、特にゴルフブームの時代に建設された施設では、環境省が「浄化槽長寿命化計画策定ガイドライン」で定めている浄化槽が最適な運用期間(30年~50年)を大幅に超過して稼働している実態があります。
開場以来浄化槽を更新していないコースがほとんどだと仮定すれば、1980年以前に設置された浄化槽を使用しているゴルフ場は全体の約70%弱を占めており、これらの施設では30年以上同じ浄化槽を使用している可能性が高いです。
開場年 | 1960年代以前 | 1970年代 | 1980年代 | 1990年代 | 2000年代以降 | 合計 |
コース数 | 408 | 771 | 292 | 499 | 161 | 2131 |
割合 | 19.1% | 36.2% | 13.7% | 23.4% | 7.5% | 100% |
先ほど述べた通り、一般的に浄化槽の耐用年数は30年~50年とされており、この期間を超えると、更新の検討時期とされています。この期間を過ぎると、適切な保守点検を行っていても何らかの異常が発生する可能性が高まるとされています 。50年程度使用可能な場合もあるものの、本体のひび割れや付帯設備の故障などを機に交換が検討されることが多いのが実情です。
さらに、当時の浄化槽技術は、現代のシステムと比較して本質的に効率が劣るため、多くのゴルフ場が、より多くのエネルギーを消費し、高額な修理費用を伴う故障を起こしやすいシステムを運用し続けている可能性があります。
老朽化した浄化槽を稼働させるリスクとは?
老朽化した浄化槽システムは、単に古いというだけでなく、ゴルフ場の経営において看過できない複数のリスクを内包しています。
- 運転効率の低下とコスト増: 旧式の浄化槽は、最新型に比べてエネルギー効率が低い傾向にあり、結果として電力消費量の増加、すなわち運営コストの上昇に繋がります。
- 環境への懸念: 処理能力が低下した浄化槽は、排水基準を満たさない汚水を放流してしまう可能性があります。これは水質汚濁や悪臭の原因となり 、ゴルフ場の評判や地域社会との関係に悪影響を及ぼしかねません。
- 構造的故障と事業中断: 老朽化に伴い、浄化槽本体のひび割れや水漏れ、マンホールの腐食による破損、内部の接触材の破損といった構造的な問題が発生しやすくなります 。これらの故障は、高額な緊急修繕費用だけでなく、ゴルフ場の営業を一時的に中断せざるを得ない状況を引き起こす可能性も否定できません。
- 法的・コンプライアンスリスク: 浄化槽の適切な機能維持を怠り、放流水質基準などを遵守できなかった場合、浄化槽法に基づき行政からの指導、改善命令、さらには過料が科されることがあります 。例えば、改善命令に従わない場合、30万円以下の過料が科される可能性があります 。
さらに、目に見える老朽化や浄化槽の不具合は、環境意識が高まる現代において、ゴルフ場のブランドイメージを損なう可能性があります 。環境保全への取り組みは、顧客選択や企業評価における重要な要素となりつつあります。浄化槽の不備による汚染や悪臭の発生は、ゴルフ場が持つ「クリーン」なイメージと矛盾し、地域住民や利用者からの信頼を失う原因となり得ます。したがって、浄化槽の近代化を怠ることは、単なる維持管理の問題ではなく、顧客誘致や地域社会との良好な関係構築にも影響を及ぼす、経営上の潜在的負債と言えるでしょう。
補助金を活用できる今が浄化槽更新の絶好のタイミング
開場以来浄化槽を更新していないゴルフ場は、交換を検討すべきタイミングがきています。しかし、ゴルフ場の規模(ホール数や付帯施設など)によりますが、浄化槽の更新にはゴルフ場の規模にもよりますが、18Hのコースですと約3,000~5,000万円の費用がかかります。その費用負担はゴルフ場にとって大きな重荷になるため、交換を足踏みしてしまっているゴルフ場もあるのではないでしょうか。
ただ、現在、環境省は、国の脱炭素化目標達成の一環として、旧式の浄化槽を最新の省エネルギー型システムへ更新する際の費用を大幅に補助する制度である「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(浄化槽システムの脱炭素化推進事業)」を設けており、補助金を活用して浄化槽を更新できる絶好のタイミングとなっています。
補助金の詳細は下記の全浄連のページをご確認いただければと思いますが、特筆すべきは、浄化槽システムの脱炭素化に資する対象事業の総事業費の原則2分の1を補助するという点です。

実際に補助金を活用して浄化槽を更新したゴルフ場の事例
栃木県のセブンハンドレッドクラブでは、開場より使用していた既設浄化槽の更新を補助金を活用して実施しました。総事業費の31,100,000円のうち、42.2%の13,125,000円を補助金で賄うことができました。
開場以来浄化槽を更新していないコースに関しては、今後必ず設備更新の投資コストが必要になることや、老朽化した浄化槽を使い続けることによるランニングコスト、仮に故障した場合の修理コストを考慮すると、補助金を活用できるタイミングで浄化槽を更新すべきでしょう。


しかし、このような補助金プログラムは予算や期間が限定されていることが一般的です(現状は令和8年度までに付いて公開されており、令和9年度以降は未定となっております)。費用対効果の目標値や対象要件が変更される可能性も考慮すると 、早期に決断し行動することが、これらの資金を確実に確保し、他施設に先駆けて近代化を進める上で有利に働く可能性があります。好条件での更新機会を逃せば、将来的に補助金が縮小されたり、より厳しい規制下での対応を迫られたりするリスクも考えられます。
さらに、この補助金によって浄化槽更新費用が軽減されることで、ゴルフ場は他の投資に資金を振り向ける余地が生まれます。例えば、ゴルフ場のDX化に向けた新システムの導入など、浄化槽以外の分野でも経営効率化を進めることが可能となり、補助金活用がもたらす好循環が期待できます。
浄化槽を更新するゴルフ場運営におけるメリットとは?
補助金を活用した浄化槽システムの更新は、単に古い設備を入れ替えるという以上の価値があります。それは、大幅な電力消費量削減とランニングコストの軽減による具体的な経済的リターンです。
消費電力量の大幅な削減
最新の浄化槽システム、特に高効率ブロワや最適化された制御システムを備えたものは、旧式のモデルと比較して消費電力量が格段に少なくなります。
今回の栃木県のセブンハンドレッドクラブの事例でも、年間約90万円(kWhあたり25.57円で算出)の電気代削減を実現することができました。また、神奈川県の36Hのゴルフ場では年間約400万円の電気代削減を実現できたとのことです。
電力消費量の削減は、ゴルフ場の収支改善に直結する電気料金の削減を意味します。これらは毎年継続的に発生する経費削減であり、利益率の向上に貢献します。また、近年の電気料金は不安定な状況にあり 、消費電力量を削減することは、将来的な価格高騰リスクに対する有効なヘッジ手段ともなり得ます。
運転信頼性の向上とメンテナンス負担の軽減
最新システムは一般的に信頼性が高く、老朽化したシステムと比較して突発的な故障のリスクが低減し、計画外のメンテナンス頻度やコストも削減される可能性があります。これにより、ゴルフ場運営の中断リスクが減り、維持管理コストの予測もしやすくなります。
近代化された浄化槽による電気料金の削減効果は、補助金によって初期投資が軽減された後も、毎年継続して積み重なっていきます。これは長期的な投資収益率(ROI)を生み出し、ゴルフ場の財務体質強化と経営の安定化に貢献します。
補助金を活用して今すぐ投資を行うことは、積極的なリスク管理戦略でもあります。老朽化したシステムがいずれ交換が必要になることは避けられません。補助金が利用可能な有利な条件下で計画的に更新することは、システム故障による緊急対応や、将来的に補助金なしで、あるいはより厳しい環境規制下での高額な交換費用に直面するリスクを回避する「未来への備え」と言えるでしょう。
老朽化したインフラを更新することでゴルフ場の持続可能な未来を確保するために
老朽化したインフラが、貴ゴルフ場の発展を妨げることのないように、総事業費の最大1/2をカバーする補助金の活用が可能な今こそ、浄化槽システムを近代化する好機です。浄化槽の更新は、単に必要な改修に留まらず、ゴルフ場のより効率的で持続可能、かつ収益性の高い未来に向けた積極的な一歩です。
ご関心をお持ちのゴルフ場経営者様、支配人様は、是非ともご連絡ください。
一般社団法人ゴルフライフデザイン 担当:木下裕介
ご相談いただければ、補助金対象となる可能性を確認する無料診断等のご案内させていただきます。
電話:080-7215-9993 メール:kinoshita [@] juchi.jp
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