ゴルフライフデザイン代表理事の木下です。
2025年1月21日から24日にかけてフロリダ州オーランドで開催された業界最大のトレードショーPGA Show 2025への参加に合わせて、タイガー・ウッズとローリー・マキロイが立ち上げた新リーグ「TGL」の試合を観戦してきました。
1月21日(火)に行われたNew York Golf ClubとAtlanta Drive GCの対戦を現地で体験してきましたので、その模様をお伝えします。

アメリカゴルフの新リーグ「TGL」とは?
TGL presented by SoFiは、PGAツアーのトッププレーヤーによるチーム制の新しいゴルフリーグです。最先端テクノロジーを駆使し、プライムタイムに2時間の白熱した試合を繰り広げます。全6チームが、フロリダ州パームビーチ州立大学キャンパス内に特別に建設されたSoFi Centerで対戦。全試合はESPNとESPN+(米国)で放送され、すべてのショットがライブで中継され、選手全員にマイクが装着されるため、仲間内での会話や味方やライバルのショットに対する掛け合いも楽しむことができ、ゴルフファンにとって新しい観戦体験を提供しています。


TGLの特筆すべき点は、PGAツアーのトップ選手24人が各4人ずつの6チームに分かれ、個人競技であるゴルフをチーム制にし、MLBやNFL、NBAのように地域に根ざしたフランチャイズ制を採用している点です。さらに、全米中のセレブを巻き込んでいることも大きな特徴です。
ウィリアムズ姉妹のほか、ミシェル・ウィ、ウォーリアーズを3度チャンピオンへと導いたNBAのスーパースター、ステフィン・カリーなど多くのセレブアスリートが出資したチームもあれば、MLB屈指のセレブ球団のオーナー、S・コーエン氏、サッカーやNFLなど多くのチームを所有するアーサー・M・ブランク氏がオーナーを担っています。
最新テクノロジーの結晶であるスタジアム「SoFi Center」
SoFi Centerは一昨年、建設中に屋根が崩落するというアクシデントにより開幕が1年遅れましたが、完成したスタジアムはシミュレーションゴルフの概念を遥かに超えた最新テクノロジーの結晶です。
競技エリアはスクリーンゾーンとグリーンゾーンに分かれており、その周囲を1500席の観客席が囲んでいます。選手はまず巨大スクリーンに向かってティーショットを放ちますが、そのスクリーンのサイズは圧巻の一言。幅約20メートル、高さ約14メートルで、スタジアムの天井近くまで達しています。ショットの精度を正確にバーチャル環境に反映させるため、18台のFULL SWINGのシミュレーターと8台の光学カメラが使用されています。
50ヤード以内のショットでは、選手はターンテーブル上に設置されたグリーンエリアでプレー。このエリアにはバンカーも設置され、グリーンには7つのカップオプションがあり、輪郭は無限に変化します。各ホールのグリーンエリアでのプレーが終わると、運営スタッフが次ホールのカップ位置にフラッグを立て直し、ターンテーブル上でグリーンエリアが回転し、次のホールのセッティングが完了します。もちろんバンカーショットがあった場合はレーキでの整備等もホール間のインターバルで実施されます。


スピーディーなゲーム展開
ゲーム展開はスピーディで、選手の1打の持ち時間はショットクロックで表示される40秒。バスケットボールだと24秒ルールとして採用されている同様のルールがゴルフでも採用されています。その影響もあって、午後7時にスタートした試合は9時前に終了しました。
残念だったのは、今回の試合では「Hammer」の場面が見られなかったこと。これはホールのポイントを倍にできるシステムで、試合の流れを変える重要な要素です。会場の盛り上がりを期待していましたが、Atlanta Drive GCの一方的な展開になったためか、Justin ThomasがHammerを使うためのタオルを投げず、その機会がありませんでした。
リーグ開幕からまだ3試合目ということもあり、選手たちも観客との距離が非常に近い環境でプレー。臨場感あふれるショーとしての面白さは十分に感じられましたが、観客自身もこの新しいフォーマットをどう楽しむべきか模索している印象を受けました。


シーズン中もトライアンドエラーで進化し続ける
このような新しいインドアゴルフリーグという試みをまず実行に移すというスタンスが何よりも素晴らしいと感じましたし、さらに大会をより良くするための改善が迅速に実施されており、帰国後もTGLのリーグとしての価値が高まっていることを実感しています。
例えば、「Hammer」の利用が少なく盛り上がりに欠けるという問題に対しては、ルール変更で対応しました。これまでは両チームを通じてハンマー使用権が1つしかなく、リードしているチームが消極的になりやすいという課題がありました。
新ルールでは各チームが3つのハンマーを所持してスタート。1ホールにつき1回のみ使用可能ですが、両チームが同じホールでハンマーを宣言することもでき、その場合はポイントが3倍(3ポイント)となり、より白熱した展開が期待できます。
放送面でも革新的な取り組みが見られます。直近の視聴者はローテーショングリーン上のフラッグが少し異なることに気づいたかもしれませんが、これはSmartPinカメラが旗竿に組み込まれているためです。このカメラは、ボールがホールに向かう様子を今までにない角度から捉え、放送に大きな付加価値をもたらしています。
各ホールの設計もジャック・ニクラウスのゴルフコース設計チームが担当しており、インドアゴルフでありながらリアルなゴルフコースのエッセンスを取り込み、伝統を重んじつつ新しいイノベーションを起こそうというスタンスが感じられました。ニクラウス・デザインのゲッツ氏は、伝統的な手描きのデザインと最先端のデジタル技術を融合させ、ユニークなプレー体験を提供する真のイノベーターです。
TGLがもたらす日本のゴルフ界への示唆とは?
TGLのリーグ運営から、日本のゴルフ界に対する示唆も多いのではないかと感じています。地域密着型のチーム制導入、セレブやアスリートを巻き込んだ運営戦略、最新テクノロジーの活用、そして視聴者体験を常に向上させようとするスタンスなど、伝統的な競技に新たな風を吹き込む手法として参考になる点が多いでしょう。
TGLは単なるシミュレーションゴルフの枠を超え、ゴルフの新たな楽しみ方を提案する革新的な試みとして、今後の発展が大いに期待されます。
残念ながら、松山英樹とローリー・マキロイが所属するBoston Common Golfや、タイガー・ウッズが所属するJupiter Links GCはプレーオフに進出することができませんでした。これから優勝チームを決めるプレーオフが始まり、今後も注目度を増していくであろうTGLの展開に引き続き注視していく予定です。
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