ゴルフ場の固定資産税を減額できる?「現況地目変更に伴う課税見直し」とは?

ゴルフライフデザイン代表理事の木下です。

ゴルフといえば、その魅力を存分に楽しむためには広大な土地を必要とするスポーツです。緑豊かなフェアウェイ、戦略的に配置されたバンカー、そして緻密に設計されたグリーンは、ゴルフをただのスポーツではなく、一種の芸術へと昇華させます。

しかし、この美しいゴルフコースを維持・管理するには、莫大なコストがかかります。特に、固定資産税はゴルフ場経営者にとって重大な負担となり得ます。少し前のデータにはなりますが、平成17年12月に経済産業省が発表した「特定サービス産業実態調査報告書 ゴルフ場編」のデータによると、日本国内の1ゴルフ場当たり総敷地面積は約107ヘクタールで、1ゴルフ場あたりの固定資産税は年間1000万円以上になることもなります

日本のゴルフ場は、大手のPGMやアコーディアなどの規模の経済性を活かした高収益事業者を含めても、全国平均で3.5%という営業利益率(東京商工リサーチによるゴルフ場757社の2021年調査結果)であり、この広大な土地を活用してゴルフを楽しむためには、効率的な経営戦略が不可欠です。その中でも、大きな支出となる固定資産税の負担を軽減する方法を見つけることは、経営の持続可能性を高める上で極めて重要です。

本記事では、ゴルフ場の固定資産税の減額方法となり得る「現況地目変更に伴う課税見直し」について解説していきます。

目次

ゴルフ場に対する固定資産の課税について

現在、国税庁のホームページに記載の通り、ゴルフ場は遊園地、運動場などと同様の「雑種地」という地目として課税されています。

固定資産税は、その土地の時価評価額に対して課税されます。ゴルフ場の時価評価方法については総務省の「固定資産評価基準」として下記のように定められています。

ゴルフ場、遊園地、運動場、野球場、競馬場及びその他これらに類似する施設(以下「ゴルフ
場等」という。)の用に供する一団の土地(当該一団の土地のうち当該ゴルフ場等がその効用を
果たす上で必要がないと認められる部分を除く。以下「ゴルフ場等用地」という。)の評価は、
当該ゴルフ場等を開設するに当たり要した当該ゴルフ場等用地の取得価額に当該ゴルフ場等用地
の造成費(当該ゴルフ場等用地の造成に通常必要と認められる造成費によるものとし、芝購入費、
芝植付費及び償却資産として固定資産税の課税客体となるものに係る経費を除く。)を加算した
価額を基準とし、当該ゴルフ場等の位置、利用状況等を考慮してその価額を求める方法によるも
のとする。この場合において、取得価額及び造成費は、当該ゴルフ場等用地の取得後若しくは造
成後において価格事情に変動があるとき、又はその取得価額若しくは造成費が不明のときは、附
近の土地の価額又は最近における造成費から評定した価額によるものとする。

総務省「固定資産評価基準」より引用

すなわち、ゴルフ場の土地の購入価格造成にかかった費用を基に評価額を算出し、それに対して課税するということになっています。

他方、「山林」という地目に関しても同様に課税されるのですが、一般的に「山林」に対してゴルフ場という付加価値をつけている「雑種地」である(同じ敷地面積を購入する場合にゴルフ場よりも山林の方が安価である)ため、「雑種地」>「山林」という固定資産の課税になるのは理解に容易いでしょう。

「現況地目変更に伴う課税見直し」とは?

昨今、コース管理の人材不足を背景に、ナチュラルエリア(ネイティブエリア)と呼ばれる、非管理エリアをもうけることで、管理面積を縮小し、プレーの満足度に直結するフェアウェイやグリーンと言った主要なアイテムに労働資源を集中することで、コストを維持しながら品質を高めることを目指すゴルフ場が増えてきています。

2021年にオープンしたタイのSai Golf Club(筆者撮影)
2021年にオープンしたタイのSai Golf Club(筆者撮影)
2021年にオープンしたタイのBallyshear Golf Links(筆者撮影)
2021年にオープンしたタイのBallyshear Golf Links(筆者撮影)

日本では「汚い」「ボールが見つからない」という理由から普及してこなかったですが、近年ではゴルフ場のサスティナビリティ(持続可能性)の観点からもその重要性が言及されており、USGAもその利点と課題についてこちらのようなレポートを出しており、日本でも少しずつ注目を集めるようになってきています。

takashioya.com
持続的可能なネイティブエリアは日本人の美意識に合わない!?人と自然が共存するゴルフ場の未来 | takashi... 近年作られるゴルフ場では、ネイティブエリアの活用が多く見られています。 プレーエリア外を覆うネイティブエリアのグラス群 ネイティブエリアとは Naturalized Area(回...

また、ゴルフ場の敷地に、木が生い茂っているだけでゴルフプレーには何の関わりもない樹林エリアがあることはゴルフをプレーしている皆様であればイメージがつきやすいことと思います。

上記のようなゴルフ場における保存樹林地(残地山林等)のエリアを「雑種地」という地目ではなく、「山林」という地目に見直してもらうことで固定資産税の課税を減らすための取り組みが「現況地目変更に伴う課税見直し」です

事例①:セブンハンドレッドクラブ(栃木県)

栃木県さくら市にあるセブンハンドレッドクラブは、
ゴルフ場用地100万平米のうち借地は5%にも関わらず、
年間約1000万円にも上る固定資産税を支払っていました。

そこで、2007年に航空写真を利用した測量を行った結果、右図のようなコース間の非管理エリアなどの現況地目変更を申請することで、全用地の25%を「山林」として評価してもらえることとなり、年間約250万円程度の減額を勝ち取ることができました。

直近のコースの非管理エリアの見直しに伴い、再度現況地目変更に伴う課税見直しを実施予定とのことです。

出典:国土地理院撮影の空中写真(2022年撮影)

事例②:八王子市のゴルフ場

2004年12月に八王子市の5ゴルフ場(八王子CC、GMG八王子G場、相武CC、武蔵野GC、府中CC)が、八王子市長に対し「宅地比準方式により課税するのは不合理」として(基本的には)山林比準方式に変更するように求めた要望書を提出しました。

陳情や粘り強い活動で、八王子市は府中CCを除く4ゴルフ場の比準方式を山林比準方式にしました。これにより、山林比準方式となった八王子CCは、加えてコース用地の内の23%が「山林」と評価され(従来は約19%)、2006年の固定資産税額は4535万円となり、前年度比2253万円の減額となりました。

「現況地目変更に伴う課税見直し」の手法とは?

本来の課税見直しの方法について

ゴルフ場には、社有地や借地などを含めて様々な土地が存在しているため、課税見直しを申請するためには「雑種地」と「山林」を区別して登記し直す必要があり、事前に境界立会いや測量など煩雑な手続きを踏む必要があり、多大な時間と費用を必要とします。

さらに登記しても、役所側でそれを再評価して課税するまでにも時間を要し、一般的には課税見直しが終了するまでは約3~5年の期間を要すると言われています。

デジタル技術の活用による期間短縮が可能

しかし、直近ではデジタル技術が進化したことで、ゴルフ場の「航空写真」「地番現況図(現況の課税地目がわかる図面)」を重ねることで、調査用資料をデジタルデータとして作成することが可能となり、約3~4ヶ月の期間で課税見直しの完了まで可能になっています。

上記のような調査や申請をゴルフ場が自社でやるのは大変ですが、市町村役場との協議や交渉資料の提出まで代行してくれる会社に依頼することで迅速に手続きを遂行することができます。依頼費用は発生しますが、固定資産税の減額を長期的に考慮すると数年で回収できることがほとんどですので、課税見直しをしたことのないゴルフ場の方は検討してみてはいかがでしょうか。

弊社にお問い合わせいただければ、上記の調査を代行してくださる会社を紹介させていただくことも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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