キャディ不足は解消するのか?今後のキャディのあり方について考える

ゴルフライフデザイン代表理事の木下です。

キャディは、風向き、グリーンのライン、クラブの選択、カップまでの距離など、ゴルファーにコース攻略の貴重なアドバイスを提供する「規則に従ってプレイヤーを助ける人」としてR&AやUSGAが制定したゴルフの基本ルールに定義されています。

しかし、近年、ゴルフはコロナ禍で少し注目を集めた一方で、ゴルフ場はキャディ不足の課題に直面しています。労働力不足が主な原因であり、これに対処するための新たな戦略が求められています。キャディの役割やゴルフ体験が変化しつつあり、テクノロジーも大きな影響を与えています。この記事では、ゴルフ業界におけるキャディの現状と未来について探ります。

目次

なぜゴルフ場はキャディ不足に陥っているのか?

2000年代以降、多くのゴルフ場が乗用カート導入により、セルフプレー主体の営業モデルに転換してきました。しかし、一部の名門コースやトーナメント開催コースでは、全組キャディーつきプレーを堅持し、その歴史や高品質なコースコンディションをセールスポイントとしています。

それにもかかわらず、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると2002年以降キャディ数は年々減少を続けており、キャディー不足が深刻な問題となっており、その要因は複数あります。

重労働のキャディー職

キャディーの仕事は、屋外での重労働を伴います。ボールを探し回り、クラブを持ち歩き、筋力や体力が要求されます。さらに、距離の測定、グリーンの読み取り、ボールのお手入れなど、多くの責務がキャディーに求められます。これらは体力と専門知識を要するため、若い世代からのキャディー確保が難しくなっています。

経済的報酬の不足

キャディーの仕事は体力を要するだけでなく、一日中ゴルファーに対応しながらプレーをサポートする責任があります。一部のゴルフ場では、キャディーの経済的報酬が不十分で、キャディーが適切な報酬を受け取れないことがあります。このため、若い世代がキャディー職を選ぶ意欲が低下しています。

多様なキャリアオプションの増加

ネットの普及やデジタル技術の進歩により、多くの仕事選択肢が拡大しました。PCを使ったリモートワークやデジタルマーケティングなど、体力的な要求の少ない仕事が増加しています。これにより、若者たちはキャディーの職業よりも、より快適な環境でキャリアを構築する選択肢を増やすことができるようになりました。

このようなキャディが不足している結果、全組キャディーつきプレーを堅持しているゴルフ場では、ゴルフ場をプレーしたいゴルファーがいても、そこに付けられるキャディがいないことで組数を限定せざるを得ず、機会損失を発生させてしまっているのが現状になっています。

では、そんなゴルフ業界が抱える「キャディ不足」という課題を解決する糸口はあるのでしょうか。それを色々な事例を基に考えていきたいと思います。

キャディ不足という問題をどう捉えるか

ゴルフ場経営の視点に立ち、ゴルフ場の売り上げを向上させる(「売上」=「来場客数」×「顧客単価」というシンプルな数式)という目的で考えると、キャディの役割は下記の2つがあげられます。

キャディフィーによる顧客単価を上げられる

キャディ付きにすると「キャディフィー」という費用がプレー代に加算されます。ゴルフ場によって金額は異なりますが、キャディフィーの平均的な相場は1人につき3,000円くらいです。

顧客満足度を高めることで来場客数の増加が見込める

筆者も先日キャディ付きのゴルフ場でプレーをしてきましたが、コースの特徴やグリーンのアンジュレーションについて的確にアドバイスをいただき、気持ちよくプレーすることができました。そうするとまた行きたいという気持ちになり、リピーター獲得の可能性が上がったり、プレーヤーの口コミなどで新規の来場者数の獲得に繋がる可能性を高めることができます。

しかし、上記を実現するためにはお客様が支払うキャディフィーに対してそれ以上価値があったと思ってもらえるようなキャディの「採用」と「育成」が必要になります。これにかかる「採用費」や「人件費」、「研修費」を鑑みた上で持続可能なゴルフ場経営をしていくためにキャディの在り方を考えていく必要があります。

キャディ不足の解決に向けた糸口

キャディ不足という課題に対して正面から向き合いキャディ数を増やしていく方法もあれば、代替手段を採用することで現状のキャディ数でも充足している状態にしてしまうという方法もあるのではないかと思いますので、それぞれの方法について深掘りしていきたいと思います。

キャディ数を増やしていく方法

キャディ不足によって機会損失が発生している場合、その機会損失がキャディの採用コストを上回るのであれば、ゴルフ場で働くキャディを増やすことがゴルフ場の経営を持続可能にしていく1つの方法になるでしょう。

キャディの採用を強化する

まず1つの方法はキャディの採用を強化することです。しかし、キャディはゴルフ場に必ず通勤しなければならない上、ゴルフ場の立地が都市の中心部から離れていることが多いため、採用エリアが限定的で非常に採用難易度が高いです。

また、リモートワークが普及することで働き方が多様化したり、ITの普及により地方の人材も様々な求人情報に触れられたりするようになったことで、採用の競争相手が増えていますし、近年の少子高齢化により就労人口が減少してきているという外部環境の変化もあります。

その中で採用を強化していくためには、もちろん「ゴルジョブ」のようなゴルフ場の求人サイトを利用するなど、求人情報が目に触れる機会を増やす方法もありますが、副業が解禁されている会社が増えている状況を生かしたり、大学生のゴルフ部の研修などを上手く活用し、副業キャディを増やすのも面白いのではないでしょうか。

海外は日本に比べて男性キャディが多いですが、ゴルフ好きのゴルファーが週末にキャディをやるケースが多くあります。このように日本でもゴルフ好きなビジネスマンの週末の副業としてキャディというのを広めることは可能かもしれません。ゴルフ好きな方であればキャディの仕事内容やゴルフについての基礎知識は備わっていますし、キャディ後のプレーや優待券を付与するなどでほとんど人件費を割くことなくキャディを増やすことができるのではないでしょうか。

キャディの離職率低下を図る

もう1つの方法はキャディの離職率を下げることです。採用を強化しても、すぐに退職するようなキャディだったらほとんど意味はありません。

キャディの勤続年数を高めるためには、柔軟な働き方ができる環境を構築したり、福利厚生を充実させたりすることはもちろん大事です。しかし、リモートワークや時短勤務を実現することは難しいですし、どの企業も様々な福利厚生の充実に注力しているため、差別化を図るのはなかなか難しいでしょう。

その中で、キャディのモチベーションを高めて離職を防止するには、適切な評価制度を確立することは非常に重要です。キャディ付きのゴルフ場ではプレー後のアンケートとして3段階や5段階の評価を促すことが多いですが、それをキャディの評価制度にフィードバックし、適切に給与に反映できているところは少ないのではないでしょうか。

太平洋クラブや千葉バーディクラブは「koko tip」というゴルファーのキャディへの評価を可視化し、サービス改善に役立てる業務改善サービスを導入することで上記を実現するための取り組みをされています。

現状のキャディ数を維持する方法

上記のようにキャディを増やす方法に取り組む方法もありますが、現実的には難易度が高いため、現状のキャディ数で維持していく方法を考えるのも解決の方法としては非常に有効でしょう。

キャディ付きとセルフを選択できるようにする

全組キャディ付きのゴルフ場だとゴルフ場としてのスタンスを変えないといけないので障壁が高いかもしれないですが、乗用カートの普及や、キャディ付きに慣れている団塊世代の引退とセルフに慣れている若者ゴルファーの増加に伴い、今後セルフの導入はゴルフ場の持続可能な経営においては必須でしょう。36ホールのゴルフ場であれば、18ホールずつセルフを導入していくなどタイミングを見計らいながらセルフプレーという選択肢を増やし、現状のキャディ数を維持しながら機会損失を減らしていくのがベストなのかもしれません。

また、キャディ付きというゴルフ場のスタンスを維持するのであれば、人間ではなく機械のキャディを導入するという方法もあるでしょう。「Hello Caddy」というゴルフバッグの自動搬送用AIロボットの実証実験が、太平洋クラブ八千代コース、赤羽ゴルフ倶楽部で行われており、このような選択肢も今後ゴルフ場で見られていくことになるかもしれません。

今後の持続可能なゴルフ場経営を行っていくためにキャディの在り方について考えるタイミングが今訪れているのかもしれません。

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